奈落の底

ここは地獄の一丁目

【感想・レビュー】BLIZARD 『BLIZARD OF WIZARD』 +α

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吹きすさぶ嵐のはざまで生まれたBLIZARD、すべてを変えてやる衝撃の1stアルバム!

 

BLIZARDは人によって好きなアルバムが分かれるイメージがありますが、自分はこれを最高傑作に推します。

『暗黒の聖書(バイブル)』という邦題もダサくて(褒め言葉)最高。

 

和製ランディ・ローズとも呼ばれた松川"RAN"敏也の流麗でメロディアスなギターと下村成二郎の鋭いハイトーンヴォーカルが絡み合うBLIZARDサウンドをデビューアルバムにして確立。

 

なんとあのJOURNEYからも楽曲提供を受けている(「Only the Young」「Liberty」)ものの、メンバーとしては同時期にIRON MAIDENのエイドリアン・スミスから曲を提供されていたEARTHSHAKERの方が羨ましかったとか。

実際、初期BLIZARDにはNWOBHMの影響が感じられ、この1stのジャケットもBLACK SABBATHの『HEAVEN AND HELL』のパロディだったりと、ブリティッシュ志向が窺い知れます。

と言いつつ、全体的にダークでハードな雰囲気の中で明るくポップなこの2曲はいいアクセントとして機能しており、アルバムのバランスや完成度を高める事に一役買っています。

 

ドラマティックに疾走する「Orion」は初期BLIZARDサウンドの真骨頂にして、ジャパメタ史に残る大名曲!

 

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余談ですが、本作のオープニングナンバーにしてバンドのテーマ曲とも言える「Blizzard」をGALNERYUSに加入する前の小野正利がジャパメタトリビュートアルバムでカバーしています。

小野正利がGALNERYUSに加入する際に最初に音合せをしたのもこの曲だったとか。

もしBLIZARDというバンドやこのアルバムがなかったら現在のGALNERYUSは存在しなかったかもしれないとまで言ったらさすがに過言でしょうが、今のジャパニーズメタルの最前線にいるバンドにも少なからず影響を与えているくらいの事は言っても許されるかと。

 

ちなみに、2014年にBLIZARDが再結成して出演したイベントで小野正利は司会を務めていたのですが、BLIZARDのステージが始まる前に「BLIZARDだけはそっちで見たい」と言ってフロアに降りてきた事を今思い出しました。

 

お気に入り度:★★★★★★★★★★

お気に入り曲:「Blizzard」「Lady Stardust」「Stealer」「Orion」

 

 

 

ついでに、2nd以降についても簡単に一言二言で。

 

 

 

KAMIKAZE KILLERS

 

さらにドラマティック性が増した2nd。

邦題は『暗黒の警鐘』。

何でもかんでも『地獄の○○』って邦題を付けられ放題のKISSか。

 

お気に入り度:★★★★★★★★☆☆

お気に入り曲:「The Second Diamond」「Band on the Run」「Love Don't Stay」「Burning Sky」

 

 

 

HOT SHOT!

 

シンプルでストレートなハードロックへと移行し、邦題もなくなった3rd。

一説には、当時のファンからは一番人気があるアルバムとも。

 

お気に入り度:★★★★★★★☆☆☆

お気に入り曲:「Shallow Runner (Fool's Game)」

 

 

 

HARD TIMES

 

初期から中期にかけての総決算的な4th。

「Boy (Running Wild)」は初期を彷彿させる名曲にして、ライブでもトリが定番の代表曲。

 

お気に入り度:★★★★★★★☆☆☆

お気に入り曲:「Boy (Running Wild)」

 

 

 

BLIZARD

 

ワーナーからソニーに移籍してリリースされた5th。 

外部ソングライターの起用やキャッチーな楽曲の増加によって洗練された感があり、1曲1曲がクオリティの高い佳曲が揃っています。

5thにしてセルフタイトルを付けているのも自信の表れのように思われます。

 

お気に入り度:★★★★★★★★☆☆

お気に入り曲:「Broken Loneliness」「Fire of Desire」「Dance」「Kill Me Your Love」「Fly High...」

 

 

 

SHOW ME THE WAY

 

後期BLIZARDの集大成とも言える6th。

いわゆる捨て曲なしの名盤。

 

ZARDという名前の由来はBLIZARDだというのは一部では常識ですが、本作収録の「Empty Days」をZARDがデビューシングルのカップリングで「愛は暗闇の中で」としてカバーしている事からも、影響を受けているのは間違いなさそうです。

(RANは後にZARDに楽曲提供も行っています。)

 

また、B'zでデビューする前の稲葉浩志がRANのソロアルバムにMr. Crazy Tigerという名前で参加しているというのはあまりにも有名ですが、BLIZARDソニー時代のアルバムにもコーラスで参加しています。

 

お気に入り度:★★★★★★★★★☆

お気に入り曲:「Over Heat」「Money Money」「Show Me the Way」「Only You」「I'm Alone」

 

 

 

DANGER LIFE

 

最後の作品となった7th。 

下村成二郎から水野松也へのヴォーカル交代、樋口宗孝によるプロデュース、シンセサイザーの大々的導入といった新機軸を打ち出しています。

特にヴォーカル交代の影響は大きく、森川之雄タイプのパワーのあるヴォーカルスタイルの水野に合わせてか、アメリカンというかロックンロールな感じの曲が多くなっています。

 

なお、下村のハイトーンは彼の最大の魅力である一方で線が細く不安定だったという側面は否めませんが、再結成BLIZARDで再びヴォーカルを務めた下村のヴォーカルは線が太くなっているように感じられ驚きました。

(声だけでなく体型も太くなっていましたが。)

 

お気に入り度:★★★★★★☆☆☆☆

お気に入り曲:「Again」「Break Out」

 

 

 

GOLDEN★BEST ~NEVER ENDING DAYS~

 

ソニー時代の3枚から選曲された廉価版ベスト。

未発表曲などは特に入っていないものの、この手のベストにしては珍しく選曲や曲順に優れているので、入門用には悪くないかも。

 

BLIZARDは全アルバムが廃盤だった時期があったのですが、再発を求めるファンの署名活動に応える形でワーナー時代の4枚がまず再発され、続いてソニーからもこのベストが発売されたという経緯を踏まえると、ただのベストアルバムだと一言で片付けられないものがあります。